第1回LINEノベル大賞

LINEノベル大賞 各賞受賞者のコメント(2)

2013年11月11日
「金賞」受賞者
神蔵柾仁

 診療室の椅子にゆっくりと座る僕を見て、先生がため息をついた。
 沈痛としか表現できない顔をしている。
 これはよほど悪い結果が出たのだろうと、僕は内心覚悟を決めていた。
「キミの診断の結果なのだが……」
「はい」
 言葉を紡ごうとして、しかし先生は躊躇いがちに黙り込む。そんなことが何度も繰り返された。
 漂う雰囲気が重い。
 僕は拳をギュッと握り締め、ただ、沈黙が破れるその瞬間を待っていた。
「キミの病名は……」
「はい」
 ゴクリと喉が鳴った。
 僕を見つめてくる先生の眼差しには、複雑な感情が渦巻いていた。
 それはまるで、この病名を告げるべきなのかどうか、この段階に至ってなお躊躇っているかのように。
「キミの病名だが………」
「はい」
「非常に言いにくいのだが」
「………はい」
「中二病だ」
「はい?」
 僕は思わず尋ね返していた。
「中二病ですか?」
「ひょっとして知っているのかな?」
「何となく聞いたことはありますけど、それっていったい、どういう病気なんですか?」
「その名の示す通り、中学二年生の頃に最も罹患率の高い病気だ」
「えと、僕、もう、三十歳を超えてますけど」
「最近、この病気は高年齢化が進んでいてね」
 中学二年生の頃に罹りやすい病気なのに、高年齢化?
 どうにも妙な話だったが、専門家でない僕は「なるほど」とうなずくしかなかった。
「ところで先生、中二病ってのは、命に関わる危険な病気なんですか?」
「キミの場合は症状的には中程度だ。おそらく心配はない」
「そうですか……よかった」
 僕はホッと胸をなで下ろした。しかし同時に気になった。
「命に関わらない病気なのに、どうしてそんなにも告げるのを躊躇っていたんですか?」
「三十歳過ぎてるのに中二病を患っている時点で、人間としてはアウトだと思っていてね」
「―――え?
 それってどういうことですか?」
「いや、何でもない」
「何でもないって……」
「いいから今の台詞は、あんまり気にしないでおいてくれたまえ」
 何だかあまりよろしくないニュアンスを含んでいたような気がするけれど………
 まあいい。今はそんなことより、僕には確認しておかなければならないことがある。
「先生、中二病ってのは、どんな症状を起こす病気なんですか?」
「簡単に言ってしまえば、ユメを見続ける病気だ」
「ユメ?
 って、あの夢ですか」
「そう。あの妄想(ユメ)だよ」
「なるほど。あの夢ですね」
「中二病患者は、妄想(ユメ)から、なかなか覚められないのだ」
「夢から覚めないのかぁ。
 ………醒めない夢。
 おお!
 僕はこの年齢になってなお、醒めない夢を見てるってわけですね!」
「どうしてそんなに嬉しそうな顔をしているのだね?」
「だって、響きが格好いいじゃないですか!」
 グッと拳を握り締める僕を見て、先生はボソリと呟いた。
「キミ、やっぱりアウト。
 今すぐ入院ね」
 こうして僕は、『第一回LINEノベル大賞』病院の金賞科に入院することが決まったのだった。

ちなみにこれがその時の診断書である。

診断書
患者名 神蔵柾仁

病名:高年齢性中二病

『上記疾病のため、平成25年11月1日から無期限の入院加療を予定している』










平成25年11月1日
『第1回LINEノベル大賞』病院
金賞科

【治療方針としては、定期的に妄想を文章として表現させるのが望ましい。その際、一般的な観念から外れたトンデモ理論や、ご都合主義などが散見される場合あるが、暖かく見守ってあげることで症状の改善が望まれる。
 また気分の高揚などによっては、過度の『モエ』、または『エロ』『グロ』などに走る傾向が強いため、注意深く経過を見守る必要がある】

金賞『RPG少年と目覚めない少女』 イラスト:Ko.T ご挨拶が遅れましてすいません。
 この度『第1回LINEノベル大賞』で金賞を受賞いたしました、神蔵柾仁と申します。
 ペンネームの由来は特になく、占いのサイトで適当に名前を打ち込んでいたら、(そのサイトでは)最高の結果が出たので、採用するに至りました。

 ところで皆様は目の前にある何らかの物体に向かって、わけもわからず『ごめんなさい!』と謝り続けた経験はあるでしょうか?
 僕はエントリーの12作品に選ばれた直後、その状態に陥りました。
 さらには立ち直ったと思っても、新たなエピソードが配信される度に、似たような症状に悩まされ続けました。
 最終候補に残った時なんて、もう、誰かに見られていたら警察のお世話になっていたかもしれません。
 アパートの隣の住人は、謝り続ける僕の声に恐怖を抱いたのでしょうか? 先日引っ越していきました。(たまたまだとは思っていますけれど)
 14歳で小説家になると決め、20歳くらいから実際に投稿を始めた僕は、人生の大半を創作活動に費やし、様々な挫折を繰り返してきました。
 だからこそLINEという記録的なダウンロード数を誇るアプリで自分の作品が公開されるということに、とんでもないプレッシャーを感じ、そのストレスで弱気になっていたみたいですね。
 学習障害(LD)だか何なのかよくわかりませんが、小学生の頃は国語のテストで、0点というまずあり得ない点数を何度も取っていたこの僕が、こんな感じで皆様に読んで頂ける文章を書けるまでになったことは、ある意味で自慢です。

 とにもかくにも僕には感謝しなければならない人がたくさんいます。
 ただ、かなり人生を遡る必要があるため、万が一名前を書き間違えてしまったり、書き忘れなどをしてしまうと大変失礼ですの で、この場をお借りしてお礼を申し上げることは止めておきます。
 実際にお会いできた時に感謝の念をお伝えするのは勿論、電話やメール、LINEのスタンプなども併せて、個別にお礼の方はいたします故、しばらくお待ち願います。

 そして最後に。
 拙作を友だち登録してくれた皆様、限られた時間内で投票をして下さった皆様には、いつの日か必ず作品で恩返しできるよう研鑽を積んでいきます。
 僕は決してレベルは高くありませんが、醒めない夢を見続けている童心を持ったイタい大人として、遠くからでもいいので暖かく見守っていて下さい。何なら冷たい眼差しでも大丈夫です。

 この度は金賞という身に余る光栄、まことにありがとうございました。

神蔵柾仁

【LINEノベル大賞 各賞受賞者のコメント】

  1. 「LINEノベル大賞」ERINA 氏
  2. ・「金賞」神蔵柾仁 氏
  3. 「友だち賞」相武流生 氏
  4. 「イラストコンペ」受賞者 もの 氏、Ko.t 氏、鰈の煮付け 氏
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